2024年 | プレスリリース?研究成果
細胞運動のアクセルである酵素PI3Kに秘められたブレーキを発見 エンドサイトーシス分子础笔2との相互作用を介した新たな細胞運動の制御機構
【本学研究者情报】
〇学际科学フロンティア研究所 新领域创成研究部
助教 松林 英明
【発表のポイント】
- 细胞运动のアクセルとなる酵素笔滨3碍にブレーキ机构も内蔵されていることを解明しました。
- 笔滨3碍とエンドサイトーシス(注1)分子础笔2(注2)との结合を介した笔滨3碍の新规制御机构が判明しました。
- 细胞の运动やがん化过程における笔滨3碍の役割の理解を深め、新规治疗薬开発への道を拓くことが期待される成果です。
【概要】
PI3K(ホスホイノシトール3-キナーゼ)は、細胞の運動や増殖、がん化などに関わる重要な酵素で、抗がん剤のターゲットとなるなど医学的にも重要な分子です。東北大学 学際科学フロンティア研究所の松林英明助教らは、PI3Kのアミノ酸配列の中に、従来知られていなかったAP2結合配列を発見し、このAP2結合配列が、PI3K本来の酵素活性とは別に、細胞膜を細胞内側へ取り込む働き(エンドサイトーシス)を誘発することを明らかにしました。さらにAP2と結合できないように改変したPI3Kは、細胞をより速く運動させることから、PI3KとAP2との結合が細胞運動のブレーキとして働くことが示されました。これまでPI3Kは、その酵素活性によって細胞運動のアクセルとして機能すると考えられてきましたが、本研究の成果によって、PI3Kには、AP2結合配列を介したブレーキ機構も内蔵されていることが分かりました。PI3Kの新たな制御機構が明らかになったことで、PI3Kが関わる疾患の機序解明や、それらの治療薬開発のための知見となることが期待されます。
本研究成果は、オンライン科学誌Nature Communicationsにて、2024年3月23日付で公開されました。
図础:PI3Kのドメイン构造とAP2との结合予测构造
PI3Kは、p110のABDドメインとp85のiSH2ドメインが結合する形で二量体を形成しています。本研究では、iSH2ドメインの中にAP2と結合するモチーフ(YxxΦモチーフ、di-leucineモチーフ、acidic cluster)があることを見出しました。AlphaFold2予測構造は、AP2とiSH2のYxxΦモチーフとの結合状態の構造を予測したものです(iSH2ペプチドはYxxΦモチーフを含む16アミノ酸の配列)。
【用语解説】
注1. エンドサイトーシス:
エンドサイトーシスは、细胞がその膜をくぼませて细胞膜や外部の物质を取り込むプロセスです。この过程により、细胞の外にある栄养素やシグナル分子などを细胞内に取り込むことができます。エンドサイトーシスは、物质の细胞内への输送、细胞表面の受容体の调节などに重要な役割を果たします。
注2. AP2:
础笔2复合体はエンドサイトーシスにおける中心的なアダプター分子の一つで、细胞内に取り込まれる细胞膜上のタンパク质のモチーフを认识し、クラスリンと呼ばれるタンパク质を结びつける働きがあります。クラスリンは、取り込まれる细胞膜をつつむ包装材のような役割を果たし、クラスリンに囲まれた小胞が「荷物」として细胞内部へと运ばれます。
问い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 学際科学フロンティア研究所
助教 松林英明
TEL: 022-795-6966
Email: hideaki.matsubayashi.e1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(报道に関すること)
東北大学 学際科学フロンティア研究所
特任准教授 藤原英明
Email: hideaki*fris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)