2020年 | プレスリリース?研究成果
機能性と耐久性を両立した量子ビット材料を発見 -半導体量子コンピュータの開発に新たな道筋-
【発表のポイント】
- シリコン中のホウ素原子に束缚された正孔(注1)のスピン(注2)において、长いコヒーレンス时间(注3)を実现。
- これまで困难とされてきた、强いスピン轨道相互作用(注4)と长いコヒーレンス时间の両立に成功。
- ホウ素原子によって量子ビット(注5)を形成することにより、高い拡张性を备えた半导体量子コンピュータ(注6)の実现が期待される。
【概要】
量子コンピュータを構築する上では、強いスピン軌道相互作用と長いコヒーレンス時間の両立が大きな課題となっています。东北大学大学院理学研究科の小林嵩助教(研究当時)らの国際共同研究グループは、弱い圧力を加えたシリコン中のホウ素原子に束缚された正孔において、非常に長いコヒーレンス時間を観測しました。今回の成果は従来の知見を覆し、強いスピン軌道相互作用と長いコヒーレンス時間が両立可能であるということを示しています。この研究結果から、シリコン中のホウ素原子によって量子ビットを形成することで、スピン軌道相互作用を利用した高い機能性と拡張性を実現できることが示されました。半導体ベースの量子コンピュータの開発への新たな道筋となります。
本研究は英国科学誌「Nature Materials」のオンライン版に2020年7月21日午前0時(日本時間)に掲載しました。

図1:试料の概略。ホウ素不纯物がドープされた厚さ50マイクロメートルの28厂颈结晶と厚さ1ミリメートルの溶融石英板がエポキシ接着剤によって贴り合わされている。室温では28厂颈结晶に结晶歪はかかっていないが、低温では28厂颈结晶と溶融石英の热膨张係数の违いのため、28厂颈结晶侧が贴り合わせ面に対して平行に引き延ばされるような结晶歪が加わる。
【用语解説】
(注1)正孔
半导体の価电子帯における电子の空隙に対応する粒子。电子と反対の正の电荷とスピンの自由度を持つ。
(注2)スピン
电子や正孔といった粒子が持つ角运动量の内部自由度のこと。この角运动量は离散的な値を取り、スピンの量子状态はそれらの値によって特徴づけられる。この量子状态によって定义された量子ビットをスピン量子ビットと呼ぶ。
(注3)コヒーレンス时间
スピンをはじめとした量子的な実体が干渉可能な状态を保持する时间の长さ。量子情报技术においては、量子情报を保持する时间の长さと言い换えることができる。
(注4)スピン轨道相互作用
スピンと轨道角运动量の间の结合係数。スピンに対して电场との结合を与えるために利用される。
(注5)量子ビット
0と1の2状态からなる、量子情报の最小単位。通常の古典的な情报処理に用いられるビットと异なり、0と1のいずれかの状态に加えて両者の重ね合わせ状态を取ることができる。0と1の状态に、例えばスピンの角运动量状态のような量子状态を割り当てることで実装できる。
(注6)量子コンピュータ
情报を量子ビットによって表现して処理する计算机。従来のコンピュータでは膨大な时间がかかる因数分解などの问题を短时间で解ける量子アルゴリズムを実行できる。
问い合わせ先
(研究に関すること)
理化学研究所创発物性科学研究センター
研究員 小林 嵩(こばやし たかし)
贰-尘补颈濒:办辞产补测补蝉丑颈20131124*驳尘补颈濒.肠辞尘(*を蔼に置き换えてください)
(报道に関すること)
东北大学大学院理学研究科
広报?アウトリーチ支援室
电话:022?795?6708
贰-尘补颈濒:蝉肠颈-辫谤*尘补颈濒.蝉肠颈.迟辞丑辞办耻.补肠.箩辫(*を蔼に置き换えてください)